お知らせ

構造計算と機械等級区分構造用製材(JAS製品)

2022.11.22 お知らせ

弊社では、大きな地震が来ても建物が壊れずそのまま住み続けられる家にするために構造計算をして耐震等級3のレベルをクリアする設計をしていますが、いくら計算上安全を確認しても実際に現場で使う材料の品質や施工方法に問題があっては設計通りの家を作ることができません。特に建物の強さを担う構造材は、その一本一本に構造計算で想定した強度があるのかを把握することが大事です。工業製品の場合、材料の配合や製造方法などにより製品の品質管理がされて均一な製品が出来ますが、木材は50年~70年という長い時間をかけて山で育つので1本1本品質に差があります。

柱や梁などの構造材の強度は、測定機械を用いて乾燥具合(含水率)や変形しにくさ(ヤング係数)など数値で表される品質と、検査員の目視により木目の通りや節の具合などを判断される品質があり、弊社では、そのどちらも十分に管理された木材を使用しています。このように、機械測定により品質が保たれている製材を「機械等級区分構造用製材」といいます。

機械等級区分に基づく木材を使いその根拠により構造計算され、適切な施工で作られた建物の「耐震等級3」の信頼性は高いといえます。

 

その構造材が生産される現場を視察させていただきました。

弊社標準仕様で採用している柱は、和歌山県田辺市にある(株)山長商店さんが和歌山県の山で育てた紀州材です。

伐り出された木の年輪は全体的に密になっていますが、特に外側が密になっています。部材にかかる力で柱や梁が曲がるとき、材の外側に引っ張られる力や押される力が働くので、同じ力が加わった場合、外側の年輪が密になっているほうが強度があり曲がりにくくなります。

山に積まれている伐り出されたばかりの木。外側の年輪がびっしりと詰まっているのがわかりますね。

 

丸い木を四角く製材するときには、木の根元側(元口)の中心と先端側(末口)の中心が四角の真ん中に来るように製材し、木材の端から端まで木目が通り、強度を連続的に保ちます。

この段階では、乾燥後の収縮や反りを見込んで規格寸法より15mm太く製材します。

 

左が根元側の元口、右が先端側の末口。どちらも木の中心が真ん中に来ています。

力のかかり方のイメージ図。上が押される側、下が引っ張られる側。中心部より周辺部に力が加わります。

 

 

乾燥は、減圧式低温乾燥機で行われます。窯の中の気圧を下げることにより水分の沸点が下がるので、低温で木材の劣化を防ぎながら乾燥させることができます。また、気圧が低いことで水分の気化が活発化し乾燥能力が高まります。

機械で乾燥させた木材は、今度は外気にさらして大気に慣らし材を安定させます。

加熱のエネルギー源は、むかれた丸太の樹皮やプレカット加工の際に出る端材を燃やして賄っています。

バイオマスエネルギーですね。

樹皮は、山に返したいそうなのですが、一度機械にかけたものから出てきたものは産業廃棄物扱いとなり廃棄するしかないそうです。

しかし、こうして燃料として利用できれば無駄にはなりませんね。

 

いよいよ規格の寸法に製材されます。0.1mm単位の精度で成形されさらに木目や節などの具合もチェックします。

規格寸法に製材された木材を検査機械に通して「含水率」と「ヤング係数」を全数測定します。

含水率はマイクロ波を使い測定、ヤング係数は木材の木口を検査機で叩き測定します。

右の赤いセンサーが含水率を測り、左のハンマーで木口をたたきヤング係数を測定します。

各検査機で測定をクリアし、検査員の目視でのチェックをクリアした材のみが、JASマークと含水率・ヤング係数の刻印が押され、根拠ある構造材として出荷されます。

 

一見何の問題もなさそうな平角材ですが、木目の通り具合が構造材として欠点となり除外された木材。

構造材以外の用途に使われます。

 

一本一本の木材に真剣な眼差しで向き合う検査員さん、作業員さんの姿は、工業製品や集成材に負けない品質の無垢材を送り出す気迫を感じました。

そして、この木材を使って(株)モックさんが作る大型パネルで家という姿に変身します。

 

「構造計算して耐震等級3の設計だから」、「乾燥材だから」ではなく、設計も部材も施工もすべて根拠あるものから作られた家だからこそ、安心して暮らしていただけると考えています。